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病気見舞状(明治時代の教科書『書牘』を読む)

教材(PDFファイル)

読み方(往信)

病気見舞帖(びょうきみまいじょう)
(1)前文(起筆)以手紙(てがみをもって)致啓上候(けいじょういたしそうろう)
(2)前文(先方の安否)兎角不順之時候ニ(とかくふじゅんのじこうに)候へとも(そうらえども)弥(いよいよ)御安全(ごあんぜん)珍重之至ニ存候(ちんちょうのいたりにぞんじそうろう)
(3)本文(先方の母の病気を見舞う)然は(しからば)御老母御儀(ごろうぼおんぎ)先比より(さきごろより)御病気之由(ごびょうきのよし)何廉御心配(なにかどごしんぱい)察し申候(さっしもうしそうろう)
(4)本文(見舞いに行けないので代理を遣わす)此節之御様子(このせつのごようす)いかゝに(いかがに)御座候哉(ござそうろうや)致承知度(しょうちいたしたく)先日より参上(せんじつよりさんじょう)可相伺(あいうかがうべく)存候へ共(ぞんじそうらえども)繁勤中(はんきんちゅう)無余儀(よぎなく)使を以(つかいをもって)申達候(もうしたっしそうろう)
(5)本文(見舞いの品に卵を贈る)御病人之御口に(ごびょうにんのおくちに)合ひ可申哉(あいもうすべきや)難計(はかりがたく)候へとも(そうらえども)鶏卵一箱(けいらんひとはこ)差上候間(さしあげそうろうあいだ)御笑留(ごしょうりゅう)被下度候(くだされたくそうろう)
(6)末文(しっかりとした療養をすすめる)猶(なお)御手当御専一ト(おてあてごせんいつと)存候也(ぞんじそうろうなり)

読み方(返信)

(1)前文(起筆)御紙面(ごしめん)致拝見候(はいけんいたしそうろう)
(2)前文(先方の安否)如命(めいのごとく)不順之時候ニ(ふじゅんのじこうに)候へ共(そうらえども)益(ますます)御壮健(ごそうけん)目出度存候(めでたくぞんじそうろう)
(3)本文(見舞いの御礼)老母病気(ろうぼのびょうき)預御尋問(ごじんもんにあずかり)難有存候(ありがたくぞんじそうろう)
(4)本文(母の病状と見舞いの品の御礼)何分老体之儀(なにぶんろうたいのぎ)只々(ただただ)日々疲れ相増(ひびつかれあいまし)食物も進み兼(しょくもつもすすみかね)甚(はなはだ)心配罷在候処(しんぱいまかりありそうろうところ)昨日より(さくじつより)俄に(にわかに)様子宜敷(ようすよろしく)少々ツヽ(しょうしょうずつ)食気相催(しょくきあいもようし)此姿ニ而(このすがたにて)外邪等之(がいじゃなどの)憂も(うれいも)無之候ハヽ(これなくそうらわば)追々(おいおい)快方にも赴き(かいほうにもおもむき)可申旨(もうすべきむね)医師申聞候折柄(いしもうしきかせそうろうおりがら)何寄之品(なによりのひな)御恵贈被下(ごけいぞうくだされ)早速為戴(さっそくいただかせ)可申ト(もうすべきと)難有存候(ありがたくぞんじそうろう)
(5)末文(本文の要旨)先は(まずは)看病中御礼のみ(かんびょうちゅうおれいのみ)
(6)末文(書留)草々不一(そうそうふいつ)

言葉の意味

・兎角(とかく)さまざまな物事を漠然とさす。何や彼(か)や。いろいろ。
・珍重(ちんちょう)自分を大切にすること。自重すること。
・何廉(なにかど)何やかやと。あれやこれやと。
・繁勤中(はんきんちゅう)仕事が忙しいこと。
・余儀無い(よぎない)他にとるべき方法がない。やむをえない。
・笑留(しょうりゅう)人に贈り物をする時、つまらない物ですが笑ってお納めくださいという気持ちを込めて用いる語。
・専一(せんいつ)他を顧みないで、ある物事だけに力を注ぐこと。
・命のごとく(めいのごとく)おっしゃる通り。
・食気(しょくけ)食べたいと思う気持ち。食欲。
・姿(すがた)様子。
・外邪(がいじゃ)病気のこと。
・折柄(おりから)ちょうどその時。折しも。
・恵贈(けいぞう)他人から物を贈られることを、贈る人を敬っていう言葉。