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移徙祝儀状(引越祝い)(明治時代の教科書『書牘』を読む)

教材(PDFファイル)

読み方(往信)

移徙祝儀帖(いししゅうぎじょう)
(1)前文(起筆)以手紙(てがみをもって)致啓上候(けいじょういたしそうろう)
(2)前文(先方の安否)先以(まずもって)貴家御揃(きけおそろい)益(ますます)御機嫌能(ごきげんよく)奉賀候(がしたてまつりそうろう)
(3)本文(引越しを祝す)昨日は(さくじつは)殊ニ天気も宜敷(ことにてんきもよろしく)新宅へ御移徙(しんたくへごいし)別而之御都合と(べっしてのごつごうと)目出度存候(めでたくぞんじそうろう)
(4)本文(引越し祝いに鏡を贈る)就夫(それにつき)何歟(なにか)御什器之一品とは(ごじゅうきのひとしなとは)心懸候へ共(こころがけそううらえども)万端御整ひ之御中(ばんたんおととのいのおんなか)別ニ工夫も付き不申(べつにくふうもつきもうさず)不珍候へ共(めずらしからずそうらえども)玻璃鏡一面(はりきょういちめん)致進呈候間(しんていいたしそうろうあいだ)御用ゐ被下候ハヽ(おんもちいくだされそうらわば)難有存候(ありがたくぞんじそうろう)
(5)末文(後日会うことを誓う)何れ罷出(いずれまかりいで)万々可申述候也(ばんばんもうしのぶべくそうろうなり)

読み方(返信)

(1)前文(起筆)御紙面致拝見候(ごしめんはいけんいたしそうろう)
(2)前文(先方の安否)御一家被為揃(ごいっかそろわせられ)弥(いよいよ)御爽健(ごそうけん)目出度存候(めでたくぞんじそうろう)
(3)本文(引越し祝いのお礼)然は(しからば)今般新宅へ(こんぱんしんたくへ)移徙いたし候ニ付(いしいたしそうろうにつき)ガラス鏡一面(がらすきょういちめん)被贈下候段(おくりくだされそうろうだん)満足之至ニ候(まんぞくのいたりにそうろう) 右は必要之品故(みぎはひつようのしなゆえ)宜ニ(うべに)居間へ相懸け(いまへあいかけ)可申と存候(もうすべくとぞんじそうろう)格別之御心入(かくべつのおこころいれ)千万難有存候(せんばんありがたくぞんじそうろう)
(4)末文(本文の要旨)此段(このだん)不取敢(とりあえず)及御礼答候也(ごれいとうにおよびそうろうなり)

言葉の意味

・移徙(いし)引っ越すこと。
・能く(よく)甚だしく。たいそう。
・奉賀(がしたてまつり)つつしんでお祝いを言うこと。
・別而(べっして)特別な。
・夫れに就き(それにつき)そのことに関して。
・什器(じゅうき)日常使用する器具や家具などのこと
・候へ共(そうらえども)〜だけれども。
・工夫(くふう)よい方法や手段をみつけようとして、考えをめぐらすこと。
・玻璃鏡(はりきょう)ガラス製の鏡のこと。
・候間(そうろうあいだ)〜ですので。
・候ハヽ(そうらわば)〜ならば。
・爽健(そうけん)健康で元気なこと。
・宜に(うべに)当然に。
・礼答(れいとう)答礼。先方の礼に答える礼。返礼。