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預かり米証文(明治時代の教科書『書牘』を読む)

米を預かるときに記す証文の書式です。預かった米の量、預かっている場所、必要な時にはいつでも蔵の鍵を開けることが記されています。

教材(PDFファイル)

読み方

預り米証文(あずかりまいしょうもん)
覚(おぼえ)
一(ひとつ)米何百石(こめなんびゃっこく)此俵(このたわら)何斗何升入(なんとなんしょういり)何千俵(なんぜんびょう)
右は(みぎは)拙者屋敷内(せっしゃやしきない)何番土蔵へ(なんばんどぞうへ)積入(つみいれ)預り置(あずかりおき)候処(そうろうところ)実正也(じっしょうなり)
御入用次第(ごにゅうようしだい)何時にても(なんどきにても)錠前相明ケ(じょうまえあいあけ)申へく候(もうすべくそうろう)
後日の為(ごじつのため)預り証書(あずかりしょうしょ)差入候也(さしいれそうろうなり)
第何大区(だいなにだいく)何小区(なにしょうく)何町(なにまち)幾番地住(いくばんちじゅう)
何某(なにがし)
何某殿(なにがしどの)

言葉の意味

石・斗・升(こく・と・しょう)いずれも体積の単位。
俵何斗何升入(たわらなんとなんしょういり)1俵を3斗8升とする場合と4斗とする場合があるので、このように記す必要があった。
実正(じっしょう)確かなこと。
明ける(あける)開けること。
差入(さしいれ)提出すること。
大区・小区(だいく・しょうく)明治初期の地方行政区画。いくつかの小区をまとめて大区とした。

読み下し

右は拙者屋敷内何番土蔵へ積み入れ、預かり置き候ところ実正なり。御入用次第何時にても錠前あい明け(開け)申すべく候。後日のため、預かり証書差し入れ候なり。

【参考】類語と註解

※読解の参考にするため『書牘』の注釈書(参考書)『書牘 : 類語註解 日用文』から該当部分を抜き出しました。

・預(あずか)り米(まい)【類語】領置(りょうち)

・米(こめ)【註解】玄米・白米を区別し、或いは美濃米・仙台米と種類を記すべし。

・石(こく)【註解】斛(こく)と同じ。我邦の制は十合を升とし、十升を斗とし、十斗を石とす。

・俵【註解】三斗八升を一俵とするものあり。四斗を一俵とするものあり。故に此俵何斗何升入、合計何千俵と記すべし。

・積入(つみいれ)【類語】搬入(はこびいれ)

・預置(あずかりおき)【類語】領置(りょうち)

・実正(じっしょう)【類語】確実(かくじつ)

・入用(にゅうよう)【類語】需要(じゅよう)

・錠前相明(じょうまえあいあけ)【類語】開錠(かいじょう)

・為後日(ごにちのため)【類語】為後日異議無之(ごにちいぎこれなきため)

・差入候也(さしいれそろなり)【類語】記載(きさい)候也、自記(じき)候也